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第7回 寿限無 展 - DocuART

kinderszenen

 

消滅したと思っていたさまざまな記憶内容が、驚くほどの正確さで現れてくる。私たちは、すっかり忘れ去っていた子供時代のさまざまな場面を、それらの細部のすみずみまで生き直すことがある。
アンリ・ベルグソン

たとえばロゼッタストーンに刻まれた文字内容について興味を持つ人は少なからずいる。一方で、その大きな石盤の色艶や欠け具合と同様に、はなから解読不能な文様の羅列としての美しさに心を奪われる人もいる。内容伝達の可否はともかく、そこにあるのは記録/ドキュメントだ。

こんなことも考えてみる。雨垂れの音を聞いたり、窓ガラスを伝う水滴を漠然と眺めたり、人は、そのこと自体何ら特定の意味内容を含まない現象に記憶を刺激されることがある(マドレーヌと紅茶?)。ベルグソンにならえば、そこに私たちが見るのはガラス窓や水滴や雨垂れといった事物ではなく、一連の出来事であるイマージュであり、同時に、現時点へ向かってなだれ込む記憶としてのイマージュをそこに投影しているということか。ふたつのイマージュの狭間の「揺れ」について。

 

  • 寿限無展は、富士ゼロックスの ART BY XEROX の企画する「複製」をテーマとした展覧会である。

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